レクサスLS開発物語 起死回生の一手(後編)

(前回からの続き)

 「燃焼のバラつきを抑えるためには、各部品の精度を高めることも大事なんですが、従来は生産性やコストなどを考えて『ここまで』という暗黙の了解がありました。しかしことLSのエンジンに関してはそれをいったん白紙に戻して、精度をどこまで高められるのか、それが顧客にとって意味のあるレベルなのかを話し合いながら限界に挑戦していったんです。例えば? 沢山ありすぎて、どれから話したらいいのか」

 いわく「燃焼」。供給される空気量のわずかな差に基づくエンジン回転のバラつきをなくすため、特にアイドル時のバルブタイミングをシリンダごとに微調整し、これによって燃焼の均一化を図った。

 いわく「熱変形」。新たに開発した3次元測定器で、エンジンの熱によるシリンダ内壁の変形をミクロン単位で測定し、エンジンの作動時のコンディションを正確に把握。シリンダ内壁とピストンとの間隔を最適化し、熱変形の影響を限りなく排除した。

 いわく「組み付け」。トヨタが誇るベテラン技術者のノウハウを移植した高精度ロボットを開発し、エンジンの生産ラインに導入。エンジンの組み付け精度を限りなく高めた。

 まだまだたくさんある、設計と生産の密な連携により生み出された極限技術が血となり肉となって、素の良いエンジンは徐々に形造られていった。それが、後に誕生する4.6LのV8エンジンにほかならない。最高出力が283kW、最大トルクが500N・m、0~100km/hの発進加速は5.7秒、0~400mは13.8秒と高い動力性能を獲得する一方で、燃費は9.1km/L(10・15モード走行)と、V8エンジンの4.0L以上のクラスでは世界最高レベルを達成することになるのだ。

 そして、このエンジンのこの性能を最大限発揮させるべく、パワートレーンのもう一つの要、トランスミッションの開発も同時に進んでいた。その方向性が固まったのは、2003年秋のことだった。

VVT-iEを組み込んだLSのV8エンジン

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