発想が貧困とぼやく上司、「アイデアオープンソース」で豊かに(前編)

あの人はなぜ次々に新しいアイデアが浮かぶのだろう―。同僚や先輩、取引先に対して、こんな感想を抱いたことはないだろうか。豊かな発想を生み出すには、原料となる豊かな情報を取り入れることが欠かせない。「発想が貧困」と言われないための行動様式と考え方を紹介する。

 「西部さん、本当にこんな作業が役に立つんですか?なぜ、マスコミとシンクタンク、スタートアップ企業の営業担当と企画担当ばかり選ぶんですか?」

 システム企画室の岸井雄介は、会議室で200枚ほど積みあがった名刺から特定のものを選ぶ作業をしながら経営企画室の西部和彦に聞いた。

 「この名刺が君の仕事を助けてくれるんだ」

 「一度会って名刺交換しただけの、机の奥にしまっている名刺がどう役に立つんです?」

 「あとで説明するから、今は黙って作業すればいいよ。ところで、うちの中期経営計画と来年度までの個別システム計画は用意できてる?プレス発表した外部に出してもいいやつ」

 「それならここにありますけど。何に使うんですか?」

 「情報の物々交換に使う。君は価値のわらしべ長者になるんだ」

 「意味がよく分かりません。西部さんは何をしたいんですか?」

 「アイデアに困らなくなる仕組みをつくるんだ。岸井は豊かな発想ができるようになりたいんだろ?」

 「それは、そうです」

 「まあ、上司に『発想が貧困だ』と注意されたら無理はないけどな」

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 岸井雄介は35歳、西日本の地方銀行A銀行のシステム企画室課長補佐である。西部和彦は37歳、A銀行でシステム企画の仕事を長く担当し、多くの仕事を成功させてきたエース人材で、岸井の大学の先輩でもある。

 岸井は現在、行内の「働き方改革」の実現に向けたシステム企画を担当している。A銀行では商圏の人口減に直面しつつあり、顧客の高齢化と若者の減少にどう取り組むかが経営課題になっている。

 地域の人口問題はA銀行の行員数や構成にも影響を与える。A銀行では今後10年で、かつての好景気時代に大量採用した年代が大量に定年を迎えるが、それを補う中途採用の中堅人材や、新卒採用の対象となる若年層も減るため行員の全体数を増やせない。

 A銀行では行員数の減少を前提に今までの業務をこなすことに加え、顧客数が減る商圏でも収益を得るための新しい業務を企画し、継続的に収益を得るように育てる必要もある。

 そこでA銀行は既存業務を徹底的に見直す方針を決めた。無駄な業務は廃止。冗長な業務は簡素化し、重複している業務は統合する。残った単純業務は人工知能(AI)を使ったロボットに代替、または人件費の低い国にアウトソーシングする。高度な定型業務はITを駆使し効率化する。

 特に重視したのが内勤人材の業務改革である。内勤人材の業務を見直し単純業務は機械化やアウトソーシング、減った時間で企画業務に特化し、新しい価値ある業務を創造できるように働き方を変える。これがA銀行の「働き方改革」の骨子である。

 この検討で情報システム部門の秋田担当部長とシステム企画室の岸井が担当となった。岸井は働き方改革に関係がありそうなITベンダー数社に話を聞き、自行での導入可能性やコスト、効果などを調査して秋田担当部長に説明した。

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