腐食と重交通で疲労破壊か(後編)

前回からの続き

外観は無傷でも内部は腐食

 ケーブル形式の橋は合理的な構造である一方、もしケーブルが破断すれば落橋など大きな被害につながりかねない。「ケーブルは外観に問題がなくても、内部に水が入り込んで腐食が進んでいる場合がある。さび汁の発生や塗膜の浮きなど変状を見過ごさないよう、注意深く点検しなければならない」。中村副会長はこう強調する。

 国土交通省は19年2月、「引張材を有する道路橋の損傷例と定期点検に関する参考資料」を公表した。同省国土技術政策総合研究所がまとめたものだ(図6)。ケーブルの定着部付近が腐食して破断したエクストラドーズド橋の雪沢大橋などの事例を紹介する他、疲労の影響なども加味して点検するように求めた。防せい油の状態なども劣化の進行を把握する際の参考になると記している。

図6■ 疲労やケーブル内部の腐食に注意を促す
エクストラドーズド橋のケーブル破断部の写真。目視可能な外側に必ずしも兆候が現れるわけではなく、内部で著しい損傷が生じている場合もあるため注意が必要
ケーブル定着部付近のボルトが脱落した写真。腐食の影響だけでなく、活荷重や風荷重による疲労の影響、その複合作用も損傷要因として考えられる。ケーブル本体だけでなく、周辺部材にも注意するのがよい
吊り橋の主ケーブルの亜鉛めっきが消耗している写真。複数の素線を束ねたケーブル内部の腐食を外観だけで正確に判断するのは困難で、さび汁の漏出や防せい油の状態などから総合的に判断・推定する必要がある
国土交通省は2019年2月、ケーブル橋の損傷事例や点検の留意点などをまとめた。同省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成

 台湾では全土の橋の点検結果などをT-BMSと呼ぶデータベースで一元管理する。08年には鋼橋の点検要領を発行するなど、維持管理には力を入れていた。しかし、ケーブルの点検手法までは体系化できていなかったようだ。

 日本の国交省に当たる台湾交通部は、落橋の原因究明を国家運輸安全調査委員会に委ねた。事故からわずか1カ月で、崩れたアーチ橋の部材を全て回収して調査を開始(図7)。20年8月までに結果を公表する。

図7■ 事故から1カ月で全ての部材を撤去

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