「女性だから」は関係ない

若手の女性技術者が抱く思い

 大成建設のような取り組みは、手法の差はあれ、業界にじわりと広がっている。こうしたなかで、若手の女性技術者は仕事や将来にどんな思いを抱いているのか?──。

 大林組の安藤規子氏は、首都大学東京で学び、施工管理の仕事を志望して10年に入社。大阪市内の高速道路工事現場を経て、昨年7月から、同社が大本組とJVで進める「千住関屋ポンプ所建設工事」の現場にいる。雨水ポンプ施設をニューマチックケーソン工法で新設する工事だ。

品質活動のワッペンには、裏側に自ら書いた「笑顔ヨシ!」の文字。「先輩から『眉間にしわが寄ってるよ』とよく言われるので」と笑う安藤氏(写真:日経コンストラクション)
現場で接する職人に必ず自分から声を掛ける。作業の段取りなど、何かと用事を考えて職人たちの詰め所に足を運ぶこともしばしば(写真:日経コンストラクション)
千住関屋ポンプ所建設工事の現場全景。隅田川沿いに大規模ケーソンによる躯体を構築中で、写真は8月末時点(写真:大林組JV)

 

 JVの土木技術職は全体で14人。紅一点の安藤氏は、配属当初から型枠支保工の施工計画などを担当している。現場ではこの7月半ばに、ケーソン構築で最初のロットとなるスラブ打設が完了した。「1年掛けて組み上げた型枠支保工が実際に効力を発揮したのを見て、思わず涙が出た」と安藤氏は嬉しそうに語る。

「夢は海外の現場」と輝く目

明石海峡大橋。ぴろり、の土木日記高低差約500mの西日本遠征へ」から(写真:小島健一)

 安藤氏は都内出身。子供時代に親戚を訪ねるたびに目にした明石海峡大橋建設の様子から生じた興味が、この道を志した原点だ。

 志望職種として施工に絞ったのは大学3年。海外学生との交流活動の一環で、ベトナムで日本の建設会社が進める橋梁建設工事を見学した体験がきっかけだ。「地元の人が笑顔で『ありがとう』と言ってくれることに、何よりもやりがいを感じる」。案内役の日本人技術者のそんな言葉が、心に強く残ったという。

 入社後、すぐに念願の現場に配属。測量用ハンマーの重さに体力差を感じたり、男性だけの現場で気を回してくれる先輩に感謝したりもしたが、当初はことさら「女性だから」という気負いはなかった。

 2~3年目になって仕事にも慣れると、「この先はどうなるのだろう」と少しずつ不安を感じ出す。社内研修で知り合ったり、上司に紹介してもらったりした30~40代の女性技術職数人を訪ねて、不安を打ち明けた。先輩の助言で気付いたのは、不安の大部分は女性ゆえの立場に起因するものではないという点だ。

 「例えば職人さんに説明する資料のアイデアを思い付くと、すぐつくる。その結果、本来の担当業務に充てる時間が押されてストレスに…。仕事の仕方にも原因があった」(安藤氏)。プロの働き方として、時間の使い方や優先順位の付け方の大切さに改めて気付いたという。そんな安藤氏は、「当面の目標は一級土木施工管理技士の資格取得、夢は海外の現場」と目を輝かせる。

 大林組では現在、土木技術職全体の約4%を女性が占め、大手建設会社では多い方だ。「近い将来は女性所長も珍しくなくなるはず。家庭との両立など本人だけでは解決できない課題をどうフォローするかが、組織としてのカギになる」。土木本部本部長室の辻忠彦部長はこう話す。