新技術の開発・導入にスピード感を(後編)

IT企業やスタートアップと連携し新しい仕組みを作る

前回からの続き

従来、建設産業は“閉じた”産業で、他産業との連携はあまりなかった印象ですが、最近ではIT関連企業などと連携する機会も増え、業界も変わってきたのではないですか。

 そうなのですが、建設業界は大企業から中小、地方の零細企業まで多岐にわたります。IT化ひとつをとっても、リテラシーの差が大きい。

 3次元データをやり取りするプラットフォームを構築し、広げていきたいのですが、約50万社の隅々まで行き渡る仕組みを作るのは簡単ではありません。ですので、まずは先ほど例に挙げた電子納品を3次元化し、設計から維持管理までデータを共有するプラットフォームを作ることを進めています。

 ただ、「最初から設計・施工に3次元データを使う」というお手本のような取り組みから、「ずっと2次元の紙の図面を基に構造物を造って、最後の納品だけ電子化する」というところまで、かなりの開きがあります。でも、施工段階の納品データが3次元化されれば、竣工後の維持管理の効率が大幅に高まる。

 まずは納品だけでも電子化したい。書類のPDF化のようにパッケージとして外注するのも容易なので、零細企業でも取り組みやすいのではないでしょうか。普及を進めるために、3次元化にかかった費用は発注者で見ることにしています。

建設産業以外との業界との付き合いが増えていくなかで、建設産業とのスピード感の違いを指摘されることがありますね。

 建設産業も、スピード感を高めていくことは必要だと感じています。その1つの場面が、冒頭でお話をした新しい技術や材料の導入に関してです。そこに時間がかかるということがかねて指摘されているので、私たちは新技術導入の「ファストパス」を作る取り組みを始めています。

 新技術を開発してメーカーの人が現場にセールスをかけると、たいていは「どこかで実績があるの?」と尋ねられます。新技術だから実績があるわけがないので、まず実績を作ろうと全国の現場を歩き回って、ようやく1例2例、採用するところが出てくる。その実績を携えて改めて営業に回り――。それに何年もかかるわけです。スピードを上げるために、「第一歩」を踏み出しやすいようにケアするのが狙いです。

 発注者側で新技術に興味を持つ職員がいても、上司に相談すると、「いままでやったことがあるの?」、「歩掛かりは?」、「会計検査院に指摘されない?」などなど、個人で処理しきれない質問を浴びせられる。職員にしてみれば、煩わしいことをするぐらいなら、いままで通りでいいやと考えてしまう。こうしたケースはいまだに少なくないようです。

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