私の駆け出し時代 災害支援が人生を決めた 坂 茂、その3

新しい構造と材料を開発する一方で、坂氏は難民キャンプのシェルターや、被災地の仮設住宅など、建築を通した社会貢献も行っている。構造や材料を開発することで、独自の建築を切り開きながらも、そもそも「建築家」という職業が社会の役に立っていないのではないか、という大きな疑問も同時に抱いていた。その疑問に、どう立ち向かったのか。坂氏のターニングポイントだったという、40歳前後の話を聞いた。

坂茂氏(写真:山田 愼二)

紙管の技術を社会のために

坂茂氏は、独自の構造や材料を開発したいという思いから紙管を開発した。その紙管の技術は、ルワンダの難民キャンプでのシェルターを皮切りに、社会貢献につながっていく。

 大上段に「社会貢献をしたい」という考えを持っていたわけではありません。ただ、10年くらい仕事を続けたころ、建築家の仕事に少し疑問を感じ始めました。医者や弁護士はいつも、問題を抱えた人たちの助けになっているのに、建築家は、裕福だったり、権力を持っていたりする人たちの仕事ばかりしているのではないかと。

 そういう仕事が嫌なわけではありませんが、建築家という職業自体が、あまり社会の役に立っていないのではないか、と思っていたのです。

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