私の駆け出し時代 発表できない建築は「失敗」 坂 茂、その5

建築は作品であり、発表することで、他人の評価と批判を受け入れることが重要だと、坂茂氏は語る。そうすれば、常に緊張感を持って設計に臨めるという。ただ、過去に1つだけ、坂氏が発表をしなかった住宅がある。発表できなかったこと、坂氏にとってそれはつまり、「失敗」の経験だった。

坂茂氏(写真:山田 愼二)

建築家としてのリスペクトがない親戚

坂茂氏に失敗談を聞くと、何もないとのこと。ただ、このシリーズの定番なので、重ねて聞くと、「何もない」という言葉の真意を教えてくれた。

 何もないですよ、本当に。失敗に見えることでも、失敗だと捉えていない、ということなのかもしれません。

 もちろん、建築ができた後に、こうしておけばよかったとか、そういうふうに思うことはあります。ただ、それは失敗ではないと思います。施主との関係がよければ、建築というのは、問題なく直せるんですよ。逆に言えば、施主との関係性がうまくいっていなければ、建築はよいものにならない。そういう経験なら、一度だけあります。

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