計算と実験繰り返し、いまだ失敗なし 川口衞氏(川口衞構造設計事務所代表、法政大学名誉教授)、その5

「これまでの構造設計で失敗したことはない」。構造家の川口衞氏はそう言い切る。では、失敗を防ぐためにどのような意識で取り組んできたのか。つくることを踏まえた設計と施工者に納得させる説明に、川口氏流の秘訣がある。

 私が重視してきたのは、つくる方法を踏まえて構造設計することです。設計時点では「こうなる」と考えていたのに、いざ施工してみるとうまくいかない、あるいは施工者から「できない」と言われてしまう…。私にとって、そんな状況はあり得ません。

 仮にそうなったとしたら、初めから良い設計ではなかったのです。失敗をしないために、きちんと施工できるような設計をする。実験や計算においても、施工中から完成後までの構造の挙動を予見して失敗の芽を残さないことが大切です。

 幸い私が構造設計を担当した建築で、施工者から「できない」と言われた経験はありません。ところが最近は、「解析や図面のうえでは合理的に設計しました。デザインも美しい。あとは誰かつくってください」といった構造設計が多い。これではまともな建築は成り立ちません。

1984年、バルセロナのホテルで坪井善勝夫妻と(写真:川口 衞)
川口衞氏(写真:花井 智子)

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